「仕合わせな二人」


 昔むかし あったとさ

 「あなたは あなたにとっての私が好きなのね
  だから私はあなたと居ると 私自身で居られなくてつらいの」

 秋に失恋した彼が 涙をこらえて夕焼け空を見上げると
 7羽の鳥が 北斗七星の☆の並びで飛んでいた

 彼はそれを詩(うた)にした


 「あなたは あなたにとっての僕が好きなんだね
  だから僕はあなたと居ると 僕自身で居られなくてつらいんだ」

 冬に失恋した彼女が 涙をこらえて夕焼け空を見上げると
 7羽の鳥が オリオン座の☆の並びで飛んでいた

 彼女はそれを絵にした


 そんな二人が春に出逢って

 一緒にいても お互いが自分自身でいられることを確信できて
 仕合わせに結ばれましたとさ

 とっぴんぱらりの ぷう! 


※ヤスパースの実存主義哲学(「愛しながらの闘い」)と
  中島みゆきの「糸」の歌詞(「あうべき糸に出合えることを
  人は仕合わせと呼びます」)と
  昔話のナラティブ(語り口)に触発された創作