意味や語源で覚える世界史重要ターム


 ☆ 世界史用語のほとんどを占める人名や地名、事件名などのカタカナ言葉や、現在の日

  本での使用方法とは異なる意味の漢字用語を覚えるのが難しいという生徒がとても多い。

  だから「丸暗記や語呂合わせで覚えるしかない」、などと思ってしまっている生徒も少なから

  ず存在する。

   でも待てよ。どんな言葉にも、必ず意味や語源、由来がある。たとえそれが固有名詞であ

  っても日本語に訳してみよう。それが中国語(漢字なので分かりやすい)や英語(知っている

  単語も多い)でなくても、英語以外のヨーロッパ語(ラテン語やギリシア語を含む)、アラビア

  語やヒンディー語、スワヒリ語などでも、可能な限り調べてみよう。そうすれば、その言葉の

  成り立ちや意味を知ることにより、至極「まっとうな覚え方」かつ「豊かな知識」(その「豊か

  さ」については後述)として定着するのではないか。

   人名ならば「名は体を表す」ということもあるので、その人物の業績や人となり、生き様な

  どと関連させて覚えられるのではないだろうか。地名ならば地形や風土、その地を舞台とし

  た出来事などと関連させて覚えられるのではないだろうか。

   世界史の大きな目的の一つである異文化理解の手段として、外国語の人名や地名など

  の意味や語源、由来を明らかにすることが極めて有効であり、かつ今日的な意義をもつこ

  とを確信する。それはあたかも、近い将来における「瞬間自動同時通訳機」(もちろん携帯

  型)の発明と普及にたとえられるかもしれない。『旧約聖書』に描かれている、バベルの塔を

  築こうとした人間達への神罰としての言語の混乱(バベル)が解消されるということ。つまり、

  使用言語が異なることによるディスコミュニケーション(造語。 discommunication 「コミュニケ

  ーションの壁」)が崩壊することによって、そのことを一つの要因とする外国人への不安や警

  戒心、先入観や偏見などを乗り越えることが可能になる世界の到来…。15世紀のグーテン

  ベルクによる活版印刷術(活字版の考案は宋代の中国が初)、20世紀のインターネットに比

  せられるこのような出来事は、決して遠い未来の夢物語ではないだろう。

   しかし、それをただ待っているだけではいけない。人名や地名といった固有名詞の意味や

  由来が、現在のような一部の好事家だけが共有する知識の枠を越えて、学校教育(世界史

  や地理、倫理などがふさわしいだろう)や生涯教育(通信講座や検定)などを通して学べる身

  近な知識にすることが、言語コミュニケーションとも分かちがたく結びついた別種の「壁」を突

  き崩す試みであり、その端緒となる取組を世界史の分野で先駆けたいと考える。